2010年4月20日火曜日

シャガ

Iris japonica
しづかなる著莪ひと群れを雨打ちて午後の曇りの果つる際を見つ 柊二

シャガ(射干,著莪)は,中国からかなり古くに入ってきた帰化植物と考えられている.
葉はてらてらとつやのある緑色で,アヤメ科の特徴の,両面が裏の葉が株の根本から左右どちらかに傾いて伸びて,葉の片面だけを上に向け,その面が表面のようになり,二次的に裏表が生じている.シャガは三倍体のため種子ができない.このことから日本に存在する全てのシャガは同一の遺伝子を持ち,人為的に広がったと考えることができる.中国には二倍体があり花色,花径などに多様な変異があるという.

花の構造は細工に富んでいる.外花被片には,基調の薄紫の上に濃い紫の斑点と中心部に黄色の立体的な筋があり,縁にはフリルがついている.内花被片は薄紫一色だが,縁には細かい切れ込みが入っている.もっともシャガらしいのは,めしべの先端のひらひらした部分,花柱枝と呼ばれ,おしべを隠して保護をしたり,蜜を目指して花の中に入ってくる昆虫にうまく花粉がつくようなトンネルを作る役目を果たしているそうだ.写真ではこの花柱枝の裏側に雄しべが見える.

引っ越して直ぐに,近所の方からカンアオイと一緒に戴き,その後日当たりの悪い裏の通路際で暮らしているが,それなりの風情をかもし出している.

歌人としても知られる佐藤達夫は「シャガは,(貴婦人の)春の装いのボンネットだといえそうである.」と”続植物誌”(学陽書房 1977)に記したが,優雅ではあるものの,宮 柊二の歌にあるように寂しさが華やかさに勝っているように思われる.

おまけはカーチスのボタニカルマガジン(1797)のシャガの図譜(銅版手彩色).

"Iris Chinensis" William Curtis's Botanical Magazine (1797)

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